●電子野帳のプロフィール
1.パーム参上(手のひらの土建屋) ●どうもPalm-OSデバイスのような小さなコンピュータをみると、必ず「それで何ができるの?」とよく聴かれる。土建屋ではシステム手帳なんてもの使っている人は見たことないし、まして電子手帳ともなれば言わずもがなである。手のひらをこまねいてあれこれ考えても数十トンの荷重には耐えられそうもない。いつも現実的な対応をすることが大切なのだ。そのような現場で手のひらのシミュエーションはあまり歓迎されない。 ところでそういう現場では何を使っているかというと、初心者からベテランまで、多くの人は緑色の測量野帳を手渡されて汎用の工事メモに使っている。ようするにそれで何かをするのではなく、工事の出来形を計測したりスケッチしたりと、現場で起こった様々な情況をただただ野帳に記録する。胸のポケットに入る大きさだし、薄いのにちゃんとハードカバーが付いて撓(しな)らないので片手で持ってもしっかり書ける。布張りなので破けにくくメモがバラけることもない。測量野帳のレイアウトで便利なのは、左側に数値欄が表組みになっていて、右側にメモ用の欄が並んでいる点。丁度左にExcel、右にWordというレイアウトになる。スケジュール手帳のレイアウトをもっと汎用にした感じで、結局色んなことを書き込んでいる。正式な書類とは別の雑記帳という感覚なのだが業界ならではの便利手帳である。 あとは業者さんや客先への連絡先と予定表(打合せやプライベート)を書いた小さな手帳。電卓やミニ金尺とマーキング用のチョークなど。これだけを胸ポケット入れておけば粗方のことはできるようだ。土建屋の世界では重機や工作機械などじゃんじゃん使う割には、作業全体が両手の空いていることを前提にしているので、意外と収納性の好いアイテムが揃っている。そこにパーム参上!である。
●パームの基本機能 Palm-OSは携帯情報端末用のOSで、PIM機能、パソコンとのデータ連携、手書き認識などを特徴にしています。 1)PIM機能は予定表、アドレス、toDo、メモ帳という、システム手帳に似た個人データの管理機能を標準で備えていることです。これらの標準搭載アプリについてはMuchy's Palmware Review!に詳しく掲載されていますので参照ください。※PIM:Personal Information Managerの略 2)パソコンとのデータ連携はHotsyncというボタンひとつで、簡単にパソコンとパームの内容を同期しお互いの最新の情報に入れ替えてくれます。これまでほとんどの携帯情報端末が独自機能を誇る小型パソコンとして閉鎖的なデータ環境をもっていたのに対し、データの閲覧・入力はパームで行い、データの2次利用や高度な処理はパソコンで行う、という使用環境の住み分けを前提にしています。その分パームでのデータ閲覧は小さなCPUで非常に早くこなせることが特徴です。 ![]() 3)手書き認識はGraffitiというアルファベットを一筆書きしたような記号で入力します。このことで無理にキーボードを実装することなく小型化が図れるようになっています。ソフトキーボードも付属していますが、手書き認識に慣れておくと操作も早くなり便利です。デスクワークで使用するような場合には組み込み式のキーボードが幾つか販売されていますので、長文を打ち込む場合にはそちらのほうが便利です。 ![]() ![]() ![]() 最初は戸惑うが慣れれば簡単。達筆・乱筆に泣く諸兄姉殿、パームは貴方を見捨てません。(^_*)\バキッ ●実際に土建業務で使うとなると、標準のアプリケーションでは手の届かないところが多々生じます。特に複数の作業と日にちを跨いでる工程表や、工事記録、伝票などの書式の決まっているものなどは、単なる予定表やメモに留まらず入力するのにひと工夫要ります。 しかしこれからがPalm-OSデバイスの本領発揮です。パーム用のアプリケーションの数は携帯情報端末のなかでも群を抜いて多いことで知られ、数万種類にも及ぶアプリケーションで自分の好みの機能を付加することができます。英語版のものも多いのですが、操作はほとんど直感的で触っているうちに憶えるという感じのものも多いです。そこで現場で必要な機能をまとめてみると以下のようになります。
上の表を見ると、作業中も常に持っていなければいけないものと、一日に何回か確認するだけでいい物とを分けているのが、現場での習慣として根付いているように思います。これを携帯情報端末のPalm-OSデバイスで出来ることに差し替えていくと以下のようになります。さすがに図面や金尺ばかりは代替できないが、その他のことは大方ひとつの端末に収まってしまうことが判ります。 Palm-OSデバイスにあって野帳にない機能は… ・記録の際に現在時刻が自動的に反映される ・計算、検索機能が付いている ・パソコンとのデータ連携が簡単 これらはPalm-OSデバイスがデータのメモのみならず、時間、日付の管理を伴いながら計算や検索の機能を加えることで、扱うデータを常にアクティヴな状態で記録・閲覧できることを示しています。それでも足りない機能はパソコンで処理するようにします。 Palm-OSデバイスの便利なところ ・アプリケーションの種類が豊富(数万規模) ・アプリケーションが瞬時に起動して保存作業がいらない ・バッテリの持ちがいい(普通に使って1週間位) あとは嗜好の問題ですが、最近のパソコンの普及と照らし合わせると、個人の記憶に頼る部分がデータベース化できて報告書や会計処理の手続きがスムーズになるように思うがいかがでしょうか。一方で携帯情報端末というと、事務所にデータベースを備えiモードでも入力できますよ、とかいうのを思い浮かべるかもしれないが、一見手軽に見える装置も初期投資がバカにならないし、自社用にカスタマイズするとすぐに数百万円規模に膨れあがるので結構不憫な思いをすることがあるかもしれません。しかしPalm-OSの場合はもともとコンピュータとデータ連携をすることが前提で作られているアプリケーションがほとんどなので、インフラ整備等の余計な設備投資も必要ありません。また非常に多種多様なアプリケーションがすでに出回っていて、いずれもフリー〜4000円程度のソフト代(パソコンの約1/10)で済むので経済的なのです。そこで本格的なデータベース構築や情報インフラを整備する初期投資を省略してパームを使って気軽に安いコストでできることを指折り数えてみたのがこのコーナー。さて、いいもの見つかりましたか? |
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2.設計計算(まずは手のひらで設計を)![]() エンジニアといえども設計書に載らない部分を電卓で試計算しながら図面を引くのは、設計時間を最も効率的にする方法である。高機能な関数電卓に加え、通常の電卓同様のバッテリー持ちのよさが欲しかった。幸いFuncCalcという関数電卓ソフト( 最新版では式と答えをコピペできて、なおかつ関数をプログラムして代数計算もできる。画面が広くて通信機能と日本語機能に優れるザウルスを選ばなかった基準はただ関数電卓にあり。じゃあ、関数電卓買えって・・・まぁお客さんそういわずに。To Doボタンに割り当てて一発起動しています。やるべきことの第一は計算… |
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![]() QuickSheetのもうひとつの特徴は、中間ファイルを使って元のパソコンのファイルを直接書き換えないことで、例えばEcxel上で印刷フォーマットが決まっているが、パームで持ち出して現場で修正したいような場合には便利かもしれない。またマクロを設定してあるシートにも同じことが言える。ただ大量のデータを表示するには向いていない(閲覧だけでなく並べ替えとかでもたつく)ので、そちらはJ-Fileなどのデータベース専用アプリが便利であると思う。 設計計算上では、こうした抽象化された数値の閲覧にはパームはまさに当り役といえる。その分、普段の経験を補う方法でしか情報を得られないので、仕方なく現実の情況と比較し向き合うことになる。逆にそのことが実際の力学現象を理解するうえで、強力なGUIで表示された近頃のバーチャルな図式に騙されないで済むという効用もある。あとはフレーム計算ソフトなんてできればいいかなと思いながら、どうせ計算しても印刷できないし、アタリをつけるだけなら簡便な梁計算でオーダー感は十分に得られるので、物忘れのバックアップに構造計算式の幾つかを表計算にリストアップしとけば大丈夫。こまかいことはパソコンにまかせて… |
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3.工事管理(現場に手のひらを染めて) ![]() Palm-OSデバイスの小型でバッテリーの持ちのよさは、これから電算インフラを構築する国には携帯端末として持ってこいのスキルでもある。お隣の中国での事例をみる。そこに土木建築工事の工程管理にPalm-OSデバイスの使用を提案する「中国土木水利工程学会」のサイトあり(提案者は台湾の台北科学技術大学の人たち)。端末の比較にはPalm IIIcと、Win 9x ミニノートブック、CE2.1ハンドヘルドPC(いずれも台湾製?)を例に、動作の機敏さやバッテリーの持ちなどを検討。他のサイトではパームは「派楽」と書かれ「我可提供在内的一体化解決法案」と大喜びである。建設費用の監理、工事進捗の把握、資材調達の最適化などを迅速に行うため、データベース(資料集)構築にAccessを使用、現場で簡単に携帯端末から工事進捗や資材搬入の日報を書き込めるようにするには、誰でも持ち歩ける携帯端末と簡便な入力フォーム(格式)の策定が欠かせないとしている。今後PDA市場自体の活性化や短距離無線技術(Ericsson公司など)のインフラ整備により、さらにシームレスなデータ構築が可能との見通し。 考えてみれば中国のような広大な国土で、工事情況を郵便に託して監理していたのでは建設資材の調達などで工事が滞ってしまうことは確実。まぁどこでものほほ〜んとできるわけでもなさそうです。欧米や日本の商社では在庫管理や顧客情報のデータベース化はビジネスモデルとして確立しているが、そうしたマネージメント技術を個別の土建事業に移植しようとするのは合理的である。ある意味では、中国のような計画経済で土建事業を国家が直接監理している場合、こうした統計的な手法はさらに有効であるように思う。しかし日本でさえ、ここ数年の間でようやく公共工事記録の電子化が定着したことを思うと、いずれも五十歩百歩の世界であり是非がんばってほしいと思うのである。 Palm-OSに関しては中国語化のローカライザがすでに出ているし、タイ語のものなども存在する。これから開発の増加する地域で、庶民の理解できるインターフェイスを持つ手のひらコンピューターの存在は、ビジネス以外の教育面でも活躍するのではないか…などと考えたりもする。データベースのフォーム策定に限らず、Palm-OSの画面操作はWindowsのコマンドにあたる操作を簡便なボタンに託して整理するようなガイドラインがあるので、言語に関する敷居が低く馴染みやすいともいえる。最近でも台湾エイサーから中国語OSがでたり、Palmコンピューターが日本を離脱して香港に移るなど、意外にホットな市場であることが伺える。 |
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●データベースの管理については今後コンテンツを増やしていく予定。とりあえずこちらをどうぞ。よく営業関連の人たちは、商品の在庫・価格リストや顧客毎の納品実績などを持ち歩くことになるのですが、土建関連では原価管理と工事記録を現場でチェックするということになるかと思います。通常は伝票と測量野帳を携えていくのですが、パームではどうするかというと、現場でチェックして入れたデータを汎用のCSVファイルにしてパソコンと連携させ、パソコンのデータベースに情報を流し込んだり、印刷用テンプレートにリンクさせたり、ということができます。 以下の例では作業の二度手間を省くことができます。 例1)会計処理(原価管理)
例2)工事記録(日報)
ここで共通するのは入力フォームやテンプレートをパーム側で用意し、現場で確認できる事柄をそのまま記述したら、情報処理や印刷などの作業はパソコンに委ねるという方法です。これだとパームで情報処理を凡て完了させる必要がないので手軽に扱えると思います。まさにデジタルのメモ帳なのですね。 ではパーム側で用意する入力フォームはどうするのか?…というと意外に簡単で、表計算ソフトに組んだ項目とデータがそのまま使えます。ただしCSVファイルに書き出した時点で計算処理やマクロなどが失われていることには注意が必要です。つまり直接リンクするのではなく、数字や項目「のみ」をやり取りする中間データとしてCSVファイルを利用するのです。これでパームでのデータの閲覧や入力が可能になり、またデータ項目が同じであればExcelやAcessにデータをまとめてコピペして処理することができます。 ![]() パームでの表示。とりあえず既成のデータということで…汗
上記のExcel風の表をパームに流し込むと、一覧画面と個々の詳細画面とに分かれて表示される。検索や並べ替えは一覧画面で、データの新規作成・更新は詳細画面で行う。詳細画面では数字やコメントの他に、「入力日時」「チェックBOX」「選択リスト」などの設定と表示が可能。これらもCSVファイル(タブ切りテキスト)としてパソコンと同期・抽出することが可能。現場で打込んだデータをまとめて流し込むことで入力の二度手間が省ける。(かも?) |
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●業務とは直接関係ないが最近はまっているのがCashBookという家計簿ソフト。これもいつでも持って歩けるのでレシートなしでも支払いに漏れがでません。近頃ちょっと赤字傾向が増えてきたのでいろいろと査察をいれる必要があると思った次第。 さて、疑惑の犯人はいかに…?
●なんにしろ設計業務は肩こりとの格闘である。根の入れすぎ→肩こり→姿勢がおかしい→腰痛…というパターンも結構あるので、適度にリラックスして30分に一度は背伸びをするのが好いみたい。ということでACUPRESSURE & DO-INの登場でございます。私これまで肩こりは肩を揉むものだと思っておりましたら、ツボは手首だったのですね。意外と思いつつ絵のように指圧をやったら、効くんですわ、これが!! 東洋の神秘に驚きつつ嬉しい悲鳴のアプリでございます。あ〜、そこそこ!きゅうぅぅぅぅぅっと…(^_*)\バキッ ![]() ![]() |
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【あとがき】 ●ところでPalm-OSのミソは、これらのアプリがスイッチを入れたら一瞬にしてポンッと起動して使えるところ。まるで専用のROM機みたいにサクサク動くんでやんす。どのアプリにも備わっている優れたGUI環境は、むやみにアイコンを並べるのではなく、よく使うものは画面のなかに、細かい設定はメニューのなかに、というような使い勝手をより意識した設計をアプリ開発者の皆さんが心がけてくれています。マウスとキーボードという二刀流でコマンドを打ちまくるパソコンとは違い、テキパキとタップして目的のデータへと素速くアクセスできるのがパームの強みである。しかもほとんどのソフトが最後にやった動作を保存という作業抜きで自動的にバックアップしてくれるので、次にソフトを立ち上げたときにすぐに前からの作業を継続して始めることができる。図面の打ち合わせのときに、断面のスペックを訊かれてあわてて計算するときでも、サッと立ち上げてパパッと答える…歳も30半ばを過ぎると、たかが数時間前でも計算したことを経ちどころに忘れっぽくなりますしね。図面上のスペックを決めるときも長年の勘を確かめながら安心のために電卓打ってるようなもので。助かりますホント。 パームを使い出して面白いと感じたのは、自然とパソコン作業のアドバイザーとして使ってることです。パソコンの主な仕事が印刷ベースでの製作物(図面、計算書、プレゼン資料など)を打ち込むのに対し、なんでもないアイディアなどを綴る雑記帳、辞書の調べ物や電卓を叩くなど、大げさにソフトを起動することなくパパッと調べられる便利帳として、パームはとても便利なのである。Windowsのようなマルチタスク型のOSではタスクの切り替えで色々なソフトとのデータ連携が取れるし、よく多数のソフトを画面上に並べたデモ画面を見るが、設計用にCADデータを扱うのにそのようなチマチマした作業は向かない。そしてデータの見比べをしながら作業するときにCAD画面が視覚から失われてそれを頭で記憶しないと書き込めないようなことが生じる。今まではそうしたバックデータに紙と電卓を使っていたのだが、要るのか要らないのかよく判らないデータが混在して整理するのに2度手間が掛かるようなことも生じていた(単に要領が悪いだけかもしれないのだが)。パームはあとでパソコンにバックアップの取れる点でも、仕事でオフレコを残す道具としてユニークなサブマシンなのである。 |