讃美と会衆 ボストンのシンギング・スクール

●神話の図式化
 18世紀:ピューリタンの社会的契約の図式化
 バラッド、ライン・アウト唱法、フッギング・チューン、etc.

例)讃美歌162「あまつみつかいよ」

A)冒頭のリズミカルなメロディーは、バラッドやワンステップの
 ダンスに用いられるイギリスのストリートカルチャーに属する
 もの
B)“主をたたえよ”のフレーズはスコットランドやウェールズに
 伝承される伝統唱法であるライン・アウト唱法が使われる

 つまりこの歌は、街の大衆(移民一般)の呼び声が、伝道する側
 (ピューリタン)の宗教的伝統に参加する様子を表している。

・移民社会において民族の違いを超えた礼拝参加が求められながら、
 会衆の救済はピューリタンの所有する社会的な契約と密接な関係
 にあり、生活マナーが礼拝のパーソナリティの一部を占める
 (民族・宗教セクトとは異なるが近いものもある)

・一方でリヴァイバル運動の影響のなか会衆を伝道集会に動員する
 ため、彼らの文化的習慣で礼拝を組立てることにより、聖書の民
 としての社会的契約の完成を予見し信仰の世界に招き入れた


●文化的背景
・王党派の音楽へのカウンターカルチャーとして、会衆派教会の讃
 美では英国のローカルチャーが共通語となる(同時に教会的な伝
 統との分離も起きる)
・シンギング・スクールでローカルチャーを国民的な学問として学
 ぶ啓蒙主義とともに、音楽の技法としてはヘンデルなどの古典的
 な技法が模倣され、異なる旋法の調性的融合などが試みられてい
 る(民族的な癖の中和と統合)
・ただしB.フランクリン(1706〜1790)の父が「バラッ
 ド売りは乞食の商売」となじった保守的な時代の名残は依然とし
 てあった
・「改心の告白」を重視するなかで、改心を引き出すためにペシミ
 ズムの影を落とす歌詞(グルーミィ・テキスト)が好まれ多くつ
 くられた
・リヴァイバル運動にみられるキリスト来臨の先触れとして考えら
 れる社会契約の成就は、アメリカの文化的なテーマとなり国民性
 ともなっている




シェイプ・ノート(記号付き音符)


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