■記憶の海を渡る
1.パーソナル・データの集積と整理 ●ここまでして資料をパームに詰め込んで持ち歩く意義ってなんだろうか…少し立ち止まって考えてみた。 ひとつは出先の現場で出会う事態に柔軟で確実な方向性を持たせるためのバックデータが欲しい点。この点では設計資料は参照するためだけのものであり、閲覧のためのソフトが単品で存在すれば有意義な判断材料が得られる。これはなにもコンテンツの携帯が命の綱というわけではなく、連絡先の上司(生き字引)や客先、インターネットで公開される情報というコミュニケーションの手段だけのデータでも可能である。そうした視野も含めて、独立した判断材料を持ち運ぶことに柔軟性を持って対処できると思う。 また別な要望として会社のパソコンと自宅のパソコンとの間に位置するパーソナル・エディタとしてのPDAの役割もある。会社での仕事には純然たる業務と、残務処理のようなものがあるが、会社に拘束されずにプライベートな時間を生かすためには、会社の業務を要約して持ち歩くということも考えられる。この場合マルチメディア・コンテンツを製作するためのフル装備は必要なく、業務の概要が把握でき、簡単にコメントを追加できる程度のもので十分であろう。個人的には会社のデータ丸ごとの持ち出しは好まないし、エピソードだけのほうが物事をシンプルに思索できることがある。自分との対話を促進するのもPDAの役割となるかと思う。パーソナリティの客体化としてPDAは有意義なものとなっている。 次に適切なアドバイスを引き出すため、既に収集したデータのマネージメントが必要になる。多数のデータがどのプロジェクトに関わっている情報であるかが明確に表示され、しかもいつでもすぐに閲覧できるような状態に整理したい(なにやらISOのマニュアルを一人芝居してるみたいですな)。パームに入れたデータは母艦でバックアップが簡単に行えるので、出先で得た情報を入れた分だけ更新することができる。しかしPalm-OSの長所であり弱点ともなる点は、PIM機能以外にデータをマネージメントできる機能が驚くほど省略されている点にある。標準機能で検索もできるが全てのソフトのデータを網羅するような完全なものではない。Palm-OS上では各ソフトのカテゴリ分けはできても、各個データを特定名称の下に関連付けてマネージメントできるフォルダ(もしくはランチャー)が存在しないために、プロジェクトの多面的な要素を辿るには、個人の記憶かデータリストを書いたメモに頼らざるをえなかった。ぶっちゃけた話ものすごく面倒見よくしてあげなければ、パームにデータを貯め込んでもほとんど使わないで放置する可能性が高い。忘れっぽいアタクシといたしましては、時間に関係しないメモやネットの切抜き情報が仰山ありやすので、それを効率よく整理できるだけでも充分助かります。 ちなみに物事の理解には、時間軸上に実存するものと、概念上に想定されるものとがある。予定表が時系列に沿った行動の管理(科学的、あるいはクロノス的な整理)を促すのに対し、蓄積されたデータをプロジェクトの概念に沿った理解(思索的、あるいはカイロス的な整理)にまとめることも必要で、これがPalm-OSに新しいマネージメント能力とニーズを引き出しているような気がする。 |
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●ひとつの方法として、異種ソフトのデータを階層管理できるソフトSetonNotesがリリースされている。アウトラインエディタの顔付きをしていながら、実はプロジェクトの下に自由に他のソフトのデータを寄せ集め関連付けることができ、なおかつ階層内のデータを直接起動できる(かなり軽快に!)、ちょいと憎いぜこんちくしょうめってな感じのソフト。プロジェクトに関わる設計資料を気軽にリンクしておけば整理整頓できて便利である。 ![]() ![]() |
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![]() 同様なソフトにMcFileがあり、こちらは連係可能なアプリケーションを多数揃えて、多様なファイルの閲覧に備えている。こうした個々人の開発したソフトが手を組んで協力関係にあるのはいかにもパームらしい微笑ましい光景。 |
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以上のことから、データの携帯にはコミュニケーション以外にもプロジェクトの理念の整理がつきまとい、その作業を通じて業務の見通しを立てるようなことができる。もちろんそれは会社のパソコンでもできることなのだが、残務をあせって終わらせるのが目的で業務の取りまとめに終始するよりは、寝っ転がってリラックスした状態でゆっくり考えたいのが私のスタイルなのである。そのほうが仕事のこだわりと割り切りのメリハリがついて良い結果が出せるように思っている…って、結局早く寝ることが目的なのか(^_*)\バキッ |
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2.便利な専用データベース ●あとパーソナルなデータばかりでなく、一般的なデータベースで役立つ物も多い。英和・和英辞書や国語・漢和辞典のようなものから、時刻表、郵便番号一覧、TV番組表…などなど生活情報をふんだんに盛り込んだ専用データベースの閲覧ソフトが私のパームには沢山詰まっている。これらのモノを鞄にギッシリ詰め込むと考えただけで諦めていたものが、ともかく手帖サイズに入ってしまうのには驚いてしまう。私自身、OS4.0からメモリカードに対応したお陰で、益々多くの調べ物を詰め込むようになった。企業で売り物になるデジタル製作物を作るにはパソコンは高機能で処理も速いのだが、一般生活にはタダ知りたいだけのことが意外と多いことに気付いたとき、様々な書籍を書棚まで取りに行ったり、パソコンでインターネット画面に向かうということがいかに無駄な作業であるかということを悟った次第です。(単純にパソコン用データベースが二次使用を前提としているため高価であるという理由もある) もちろんそれは雑務に相当することなので、本業のように積極的な業務改善を施そうとしないのだが、フォーマットが整っていないがために、ちょっとしたことで手間取るのが雑務の常でもある。パームにはそうした生活に密着したソフトが沢山あるため、比較的簡単に物事を流すことができる。 【様々な専用データベース】
これだけ特定の機能に絞ったデータベースが揃う背景には、もちろんそれぞれが便利な点があげられるのですが、手帳のもつ備忘録のニュアンスが頭の片隅にデジャブってるからかもしれません…単に物覚えの悪い頭がヒデブってるだけじゃ…(^_*)\バキッ。 逆にいえば、これまでパソコンが人間にできないことをアピールするデジタル処理の権化のように機能強化を繰り返してきた反面、パームはHotsyncでこの作業ストレスを回避して身軽になったともいえるのでございます。パソコンが背負ってきた、テキスト、画像、音声…というような物理現象をデジタル的に分裂させて情報化し伝達するという課題を、パームはスルリと脱皮して画面上でのイベントとして利用方法を明確にしたソフトの在り方が追求されているともいえます。それは究極のアナログ品質を伴ったモノとしてのデジタル製作物ではなく、データがテーマを持つとでも申しましょうか、すでに画面に現われた時点で意味があり語り掛けてくるオンデマンドなデータであるともいえます。そしてそれが機能制限によって八方塞がりになるどころか、必要最低限のアクションで最良のアドバイスを得るというユーザー・エコノミーな情況が生まれるように思います。(ソフト開発者の方々、本当に感謝いたします!!) 一方でクラシカルなコンピュータの利用法として、人間が百年掛かってもできないコワモテの科学計算や、異次元の世界をリアルに描くCG作品は、パームから生まれてこないように思います。長文や精緻な描画でさえも不得意なのですからそれは目的が違うといえます。あくまでも処理はパソコンに、発言は人間にという役割分担を意識したうえで、シンプルでアクティブなデータの世界をジャブジャブ泳ぎまわることをお勧めいたしまする。 |