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| 家庭の団欒で 16世紀にはグーテンベルクによる印刷技術の改良でこれまでとは異なる大量の印刷物が出ました。ルターの九十五箇条提題も単なる噂ならあれほどの反響はなく、ルターが教会の扉に貼付けた1枚の紙を印刷して流布させたことが事の広がりを作る要因にもなりました。同じように会衆讃美はポケット版の印刷物として出版され、それまで礼拝堂の聖歌隊席に備え付けてあった羊皮紙の写本とは違う形で民衆の手に届けられました。聖歌集を手にした民衆は、広場での集いや家族の団欒のような様々な機会で讃美歌は歌い楽んだのです。なかにはフランスのように讃美歌を広場で歌うことを禁止するために絞首台が置かれた例もあったそうですが、それほど民衆を夢中にさせる魅力が当時の会衆讃美にはあったのです。 礼拝以外にも家庭生活で親しまれた時祷書の代わりとなるものとして、コラールは教会暦に従ってレパートリーを展開していきます。ルター派はローズンゲンという聖句日課をもって、祈りと瞑想に励むように勧めます。カルヴァンは詩篇を歌う祈祷書として考え、聖務日課に代わるものとして信徒生活をより聖書的に論拠付けようとしました。カルヴァンはさらに会衆をイスラエルと同様に神の選びと契約による歴史のなかに組み入れます。このことで信仰問答を踏まえた信徒教育を家父長の責務と考えるなど、信徒とその家族の自律性をも促すものとなったのです。いずれにせよ、宗教改革時代の聖歌は家庭での娯楽にも波及して、信徒生活に敬虔なアクセントを与えていたといえます。神のためにも人のためにも人々は聖歌を歌い交わしたのです。
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