V 第三諸国の聖歌CD

【ラテン・アメリカ】
◆アルゼンチン
 ミサ・クリオージャ
Missa Criolla/MiaaFlamenca (蘭 Philips 814 055-2)
1965年の第二ヴァチカン会議におけるミサでの各国語使用の解禁をうけて、アリエル・ラミレス氏が南米アルゼンチンのフォークロアを使って作曲したミサ曲。クリオージャとは大地を意味している。これは作曲当時の初禄音盤(1968)。CDには同じ頃に録音されたミサ・フラメンカも収録。

◆チリ
 人民のためのオラトリオ
Angel Parra/Para el Pueblo (仏 Auvidis A 6163)
民主的手続きで南米における初の共産政権誕生の後に、1973年軍事クーデターが起こり民衆を含む多くの人が激しい弾圧の下で、強制収容所に送られた。このCDはアンヘル・パラ氏により、そうした収容所で演じるために作られた受難劇とミサとを収録している。
ミサの聖餐の歌詞にはこう讃美されている。「これはパンである/わたしたちの捧げ物/ここにパンがある/わたしたちの命/パンはわたしたちの愛/わたしたちの大地/感謝と悲しみ/わたしたちの希望/より良い世界をつくるために!」

◆メキシコ
 祝祭のミサ
 
Misas y Fiestas Mexicanas (仏 Arion ARN 64017)
やはり第二ヴァチカン会議をうけて、1966年から実際に使用されてきたミサの録音。メキシコのポピュラー・ソングのアレンジで、会衆が簡単なリフレインを唱和するように作られている。こちらは上記2つのスタジオ録音と違い、ミサの実況録音である。


【アフリカ】
◆旧ザイール
 ルイロ村カトリック教会
黒曜のミサ (日本ビクター VICG-5229)
現在はコンゴという国名になった、ルワンダ国境のルイロ村でのミサの実況録音。子どもたちによる聖歌隊がサンバのようなリズムに乗って、キンキン声で元気よく歌う。20世紀後半にかけて大きな躍進を遂げた、アフリカの民族教会の礼拝スタイルをよく伝える好録音。たまたまテレビで見た紛争地域の難民キャンプでも、子どもたちが両手を真っ直ぐうえに挙げながら、左右にリズムをとって歌の練習をしていました。この録音は日本ビクターによる1983年の紛争以前の録音で、貴重な記録となった。

◆セネガル
 ケウル・モウサ修道院
Messe et Chants au Monastere de Keur Moussa
(仏 Arion ARN 64095)
フランスの聖歌研究で有名なソレム修道院の系列に属する修道院での聖歌を収録。民族楽器の調べにのってソレム唱法特有のフワフワした歌い方が印象的。ミサとその他の讃歌を収録。

◆南アフリカ
 レディー・スミス・ブラック・マンバーゾ
Shaka Zulu/Lady Smith Black Mambazo
(日本 ワーナー WPCP-4986
)
アフリカの民族的キリスト教聖歌のもうひとつの流派として、アカペラコーラス・グループがある。南アフリカのソウェト地区で盛んな歌唱は、ポール・サイモンのアルバム「グレースランド」で紹介されて以来、大きな注目を浴びている。

◆ザンビア
 アカペラ・コーラス
Zambian Acapella (米 Word/Epic EK 67930)
こちらも上記のアカペラコーラスのスタイルを使った聖歌。アメリカのブラック・ゴスペルの曲なども取り入れている。


【アジア・オセアニア】
◆日本
 隠れキリシタンのオラショ
洋楽事始 (東芝EMI/山野楽器 YMCD-1060-61)
日本の西洋音楽史家の皆川達夫氏がライフワークのひとつとして、オラショとカトリック典礼のつながりを解明しようとした録音。前半の1枚をキリシタン時代の「サクラメンタル概要」に記されたミサの復元、後半の2枚目がオラショの現地録音となっている。江戸時代の百姓に抱く素朴=無知のイメージとは裏腹に、典礼そのものの記憶力と伝承の確かさは庶民が支える文化のしたたかささえ憶える。オラショの録音としては、1950年代のものと1970年代のものとに分かれているが、20年の歳月のなかでもテンポ感が変わっているのは興味深い。

◆日本
 カトリック典礼聖歌
詩篇唱和 (フォンテック EFCD4004)
1965年以降のカトリック典礼の刷新を受けて、高田三郎氏が作曲・監修に当たった聖歌集のなかの詩篇だけの録音。このほかにミサ、賛歌、祈りの四季と合わせて4枚の録音がなされている。歌唱は当時教授を務めていた国立音楽大学を中心とする典礼聖歌研究会。詩篇朗唱に応答賛歌を加えるスタイルで、フランシスコ会訳の動詞を後に持ってくる自然な日本語により、アンニュイな世界が爛漫に広がる。讃美歌の主情的な表現に比べ、詩篇をそのまま詠んでいるという印象をうける。

◆日本
 琉球讃美歌
教会行ちゃびらやー (ライフ企画 WLP-LK9701)
沖縄のバプテスト教会牧師、横田盛永氏による琉球語による讃美。三線(サンシン)を片手に島歌のメロディーにのって唄い出す。後半は普通の讃美歌を琉球語にして歌ったアカペラコーラス。

◆台湾
 玉山神学校
山海歓唱/玉神之音D (台湾 得音有声出版社 FCD8505)
台湾の玉山(ロンシャン)神学校で組まれている民族讃美のプログラムによる録音。同課目の各年の卒業生が作品を録音するということが行われているが、このCDは台湾長老基督教会の50周年記念の録音でもある。台湾の山岳民族は合唱する伝統があり、地元では山岳民族によるコーラスコンクールもある。普通の民謡からオリジナルのピアノ伴奏の讃美歌まで幅広い作品を収録。

◆フィジー/トゥブアイ島
 ポリネシアの聖歌
Tubuai Choir from the Polynesian Odyssey
(米 Shanachie 64049)
南太平洋沖のフィジーは19世紀中盤からメソジストの宣教により、現在ではマウイ族のほとんどがクリスチャンという地域である。ポリネシアも合唱の盛んな地域で、今では独立した宣教を行っているので、ラグビーで踊るような勇ましい曲から南国的なゆったりした曲まで収録されている。普通の民謡も合わせて歌われ、伝説の女戦士の勇敢な物語なども含まれる。

◆インド/タミル地方
 デボーションのための歌
Jebamae Jeyam/ Bro.D.G.S.Dhinakaram
(インド The Indian Record IP-5031)
「ムトゥ踊るマハラジャ」もあわや、と思わせる暑苦しい顔のディナカラムおじさんがひとり歌うデボーションソング。ハイテクサウンドを武器にやりたい放題である。楽しい讃美のあとにメッセージが付くのだが、タミル語なので何を言っているかは判らない。ブックレットには、たびたび夢でジーザスと直接合って啓示を受けたというのでタダモノではなさそうだ。実業家でクリスチャン関連の雑誌も出しているという。これを聞いて私も録音をしようと勇気(?)を出した。




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