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Ⅰ キリスト教関連書籍
【古代キリスト教】
◆新約聖書Ⅳ パウロ書簡
新約聖書翻訳委員会 岩波書店
パウロの伝道と神学とを表す書簡の新しい訳。ユダヤ的教養とコスモポリタンの視野とを兼ね備えたパウロの独自性と、地中海沿岸に散在するあらゆる教会が一致しえた十字架の福音への救心的な思いを描く。キリスト教説教の最も古典的な規範。
◆新約聖書Ⅴ パウロの名による書簡/公同書簡/ヨハネの黙示録
新約聖書翻訳委員会 岩波書店
使徒の権威が確立した後の牧会的な配慮によって書かれた書簡集。政治的迫害やグノーシス主義との確執がより鮮明に現れた時代を反映して、早くも伝承の様式化が進んでおり、その意味で典礼的な要素を多分に含んだ古代教会の礼拝の様子を垣間見ることができる。
◆原典古代キリスト教思想史 Ⅰ 初期キリスト教思想家
小高 毅 教文館
聖書の書かれた時代のすぐ後の護教教父の文書を網羅している。むしろ教会組織の実践的な部分について地方毎の裁量が許され、新約はおろか旧約の正典確定についても意見交換がなされていた時代の柔軟でエキュメニカルな考えが伺える。聖餐のあと、病気の信者にパンと葡萄酒を届ける習慣など、アガペーの食事と重なる部分も包有していて、いろいろと教えられる。
◆古代キリスト教典礼史
J・A・ユングマン 平凡社
グレゴリオⅠ世までのカトリック典礼の歴史と変換についてまとめた良書。洗礼や聖餐、日々の祈りの習慣など、礼拝にまつわる教会生活全般について、現代に習慣として残るものと比較しながら、原初の意義を読み解いていくことにも及んでいて参考になる。
◆天使が描いた 名画への旅3 中世Ⅱ
NHK日曜美術館 講談社
ビザンチン美術の流れから始まり、ケルト、アラブ=スペイン、カロリング朝など、各地方独自の宗教的美意識に彩られた中世の多様なキリスト教社会の構図を見ることのできる画集。造形と思想を巧みに関連づけるテーマの選定がうまく、一般に判りにくい古代-中世の世界観をひと目で体験できる良書。
◆天国へのまなざし 名画への旅4 中世Ⅲ
NHK日曜美術館 講談社
上巻の続編。ロマネスクからロシア・イコンなど、爛熟した中世の宗教と美意識の融合が見物。
【近代キリスト教】
◆改革者の祈り
マンシュレック 新教新書
神学以外にあまりよく知られない宗教改革の内面に迫る祈りの世界。型どおりではない個性に彩られながら、ひとつひとつの祈りが彼らの確信する宗教的な良心に貫かれ、公の場での祈りの重要性を教えられる。編集の際に典礼との関連が失われているのが唯一微少な難点。
◆放浪学生プラッターの生涯
トマス・プラッター 平凡社
スイスの田舎から博士まで這い上がるプラッター博士の珍道中。チューリッヒの改革を背景に、当時の人の中世さながらの大衆性と生活中心のさっぱりとした合理性が描き出す人間模様には、理想的な生活環境の探求といった近代性より、ありのままの状況のなかでありのままに生きるたくましさが感じられる。
◆世界説教史 Ⅲ 17-18世紀
E・ターガン 教文館
とかく忘れられがちな啓蒙時代の教会。近代化のなかでの宗教的な意義よりは、むしろ文化的な影響を考えると無視できないものが多くある。教会音楽との関連でみると、教会音楽の内容の不毛さと説教の不毛さとは一致している点で興味深い。典礼の意義が形骸化することと、聖書の理解が形骸化が同期することの例をみる。
◆アメリカの宗教 多民族社会の世界観
井門 富士夫 弘文堂
移民の数だけ教派があるとまでいわれるアメリカのキリスト教は、多元化するキリスト教の近代における実験場のおもむきがある。リヴァイバルが生んだアメリカの建国思想とエジプト解放神話との類似性や、国家=アメリカの正義と終末思想の関連など、それまでのキリスト教世界の常識を覆す多くの事柄が、国民性とまで言い切れる常識にいたる過程を通観できる。近代が生んだ文化宗教の最北端を検証する。
【現代キリスト教】
◆共に生きる生活
ボンヘッファー 新教出版社
1935年フィンケンヴァルデに設立した告白教会牧師研修所における共同生活の手引き書。多くの大学でおこなう神学の研鑽ではなく、体験的な修道院の伝統を呼び起こしている点でユニークである。特に「交わり」という観点で教会の存在理由を問いつめる指向は、啓蒙時代に行き過ぎた契約神学による固定化された宇宙観から抜けだした人の子の姿に近づいている。方法論としては一見乱暴な取り組みが多いが、神の言葉を行動と経験によって生きた言葉にしようと務め、他者への奉仕として生涯を選ぶキリスト者の真摯な祈りに満ちている。
◆来るべき者(上)-旧約におけるメシア思想
モーヴィンケル 聖公会出版
1956年に発表された旧約のメシア思想へのアプローチ。ノルウェー出身のモーヴィンケルは北欧のスカンジナビア学派の基礎を築いた聖書学者。聖書の基礎を口承文学であるとし、周辺国のオリエント文学との比較研究によって文化的、祭儀的な特徴を見出し、古代ユダヤ祭儀の再現を試みようとする。特に詩篇については、19世紀まで主流であった主知的な信仰告白の概念から解放し、詩篇がそもそも神殿祭儀の祭文であったとする立場から、その文脈のなかの隠喩や所作における祭儀との因果関係を明らかにするとともに、旧約全体に通底する祭儀国家としてのイスラエルの役割を考察する。この書では、そのなかの有力な存在であるメシアについて、王であり祭司、また苦難の僕であり人の子としての運命を甘受しつつ、繰り返し現れエルサレムを守護しつづける不思議な存在について、神話的な理想と歴史的な位置を論述する。イエス=メシアとユダヤ教のメシアの分岐点に立つ書でもある。
◆現代の宣教と伝道
WCC世界宣教・伝道委員会 新教出版社
1975年にナイロビで開かれた世界教会協議会(WCC)の総会での成果を踏まえて、宣教と伝道に関する方向性をまとめたもの。南北の貧困格差をもとに、冷戦や宗教などイデオロギーの抑圧に苦しむ人々との協調など、エキュメニカルな場において解放の神学の影響がいち早く表れた文書として注目されている。論述の進め方も一方的な宣告ではなく、現実に起きた事件を引き合いに出し、質問とディスカッションで合意を導き出す方法がとられる。社会の枠組みに抑えつけられた隣り合う敵と一緒に暮らすことの現実を、闘争の内にではなく、神の和解の使信に基づいて行おうとする意志が強く感じられる。
◆世界の命キリスト
世界教会協議会 新教出版社
上記の報告に続いて1983年にヴァンクーバーで開かれたWCCの総会のレジュメ。和解の使信をさらに展開して、聖餐のイメージまで昇華し、詩的な美しい文書に仕上がっている。この会議での目標が正教会も交えた礼拝の一致であったため、報告書のほうはかなり制限された雰囲気をもっていて、個人的にはこのレジュメのほうを好む。
◆キリスト教と植民地経験 フィジーにおける多元的世界観
橋本 和也 人文書院
フィジーは19世紀のイギリス統治の歴史を経て、現在はミッションから独立した自主的な教会運営がなされている。一方で、古来から変わらず新年に行われる外来王を神として迎える儀式ではメシアを迎え、また夢の世界が現実におよぼす影響は依然として言語習慣のなかに残っている。医療のための祈祷を行うメディシンマンも健在である。こうしたなかでも彼らの教会は明らかにキリスト教といえる特質をもっている。この本のエリアは文化人類学のフィールドワークだが、一般のキリスト教会も神話と現実の間をさまよう生活として宗教を受け取っていることを教えてくれる。
◆祝祭の民族誌 マヤ村落見聞録
櫻井 三枝子 (社)全国日本学士会
南アメリカのキリスト教社会では、マヤの伝統的モチーフがキリスト教の仮面を被って演技されていることが多くみられる。生活は支配されても魂は生き続けた文化のもつ柔軟なたくましさを改めて思い知らされる。南アメリカのインディアンの生活は、レヴィ=ストロースの神話と社会の構造化の舞台となった。彼が抱いた民族の純粋性という憧れをぬぐい去ってもまだ生き続ける人間の尊厳は、世界の多元的な状況を理解する手助けとなると思われる。
◆乳と蜜の流れる国 フェミニズム神学の展望
E・モルトマン=ヴェンデル 新教出版社
男性の手中にあるイデオロギー主体の政治形態は、生活のうちに多くの犠牲と抑圧を生み出して成り立っている。一方で女性は事物を実際に腕に抱きかかえ、喜びも痛みも共有しながら身体で感じることを基準に思考する。そうした仮説に基づいて世界を展望するとき、女性は常に平和を慕い求めるシンボルであり、また常に危険の先鋒となって犠牲を強いられる存在でもある。教会での性的な表現の抑圧のために、ないがしろにされてきた女性のもつ身体性の価値の復興について展望したこの本は、来るべき協力関係の前触れであることを感じさせる。
【日本のキリスト教】
◆聖書集 近代日本キリスト教文学全集14
教文館
「ハジマリニカシコイモノゴザル」の書き出しで有名なギュツラフ訳ヨハネ伝から、明治時代に競って訳された聖書の様々な邦訳を抜粋ながら収めたもの。実際の伝道に際して出された様々なアイディアが柔軟に繁栄される状況がとても愉快である。
◆詩篇
左近 義弼 聖書改訳社
明治の終わりに訳され、現代における聖書原典のテキスト分析を日本人ではじめて行い、見事に繁栄させた画期的な訳。原典の対語表現を意識した躍動的な文体が、ストレートな清潔感を生みだしている。復刻版が出ないものかと切に願う。
◆オルガンの文化史
赤井 励 青弓社
明治の音楽教育で重要な役割をはたしたベビー・オルガン。讃美歌作家として名を馳せたL.メイソンの甥っ子が興した製作会社による製品は、一般には耳新しい西欧の節を直感的に憶えさせ、19世紀の日本での讃美歌普及に広く用いられた。これはその時事談話をまとめた良書。伝道を官主導ではなく、いち早く庶民の側にたった当時の宣教師たちの勇気と先見のなせる業でもあった。
◆讃美と詩と音楽
由木 康 教文館
昭和における讃美歌作家として有名な著者の、自序的なことも含めて讃美歌について方々に投稿した文書を寄せ集めたもの。会衆讃美にほぼ限定されているが、作者の側の眼でみた批評には高飛車な意見や法外な美辞麗句はなく、いたって暖かいまなざしが一貫している。
◆典礼聖歌
典礼司教委員会 あかし書房
カトリック教会が第二ヴァチカン公会議の結果を踏まえて1979年に編纂した日本語の典礼用聖歌集。特に詩篇唱において大きな成果が感じられる。フランシスコ会による訳は、動詞を文章の結語にもってくることで統一され、神と人の行動によって織りなされる交わりの場が豊かに再現されている。おもに高田三郎が行った作曲も、無駄のないメロディーの運びが巧みである。一方で司祭-会衆の応答の図式を用いることで、古代のスコラ的ヒエラルキーをあらためて復帰させており、この辺はカトリック的であるともいえる。
◆カクレキリシタンの信仰世界
宮崎 賢太郎 東京大学出版会
老いさらばえていく伝統のなかでも、しつこく繰り返されるカクレの儀礼。この本はその儀礼の次第を丁寧に記述し、16世紀における典礼との結び付き合いなども合わせて、その精神世界にせまるものである。儀礼は一見して形骸化しているようでいて、その理解は素朴な庶民の無知とはほど遠い周到さをもって保持され、その意義を自分たちの生活のなかで消化しきっている点で瞠目するべきものがある。
◆神を讃う キリスト教俳句の世界
新堀 邦二 新教出版社
庶民の手習いとして江戸時代から続く俳句は、近代においても自分の気持ちを端的に表すことのできる確実な技法だった。明治から昭和にかけて生きた市井のキリスト者の素直な感情を聞き取る面白さがここにある。
◆教会のある風景 日本の教会美を訪ねて
亀田 博和 MBC21
明治百年なんて古くさい感傷に浸らずとも、日本のキリスト教における明治ゆかりの伝統は歴然として存在する。そうした形を目の当たりにするのがこの本。10年ひと昔といわれる昨今のこと、100年以上も前のことはノスタルジー以上の新鮮ささえ感じられる。
【その他】
◆キリストの面(かお)
G・ニュルンベルガ 音響映像グループメディアセンター
古代から現代まで、キリストのイメージを大胆に刻んできた歴史を展望する。美術工芸にこだわっている点が、ファインアート重視の名残だろうか。残された「作品」の息の長さを考えれば、その憧れの深さも判らないわけでもない。
◆マリアのウィンク 聖書の名シーン集
視覚デザイン研究所
西欧の宗教名画を紹介するつもりが、マンガでパロっているのが超ユニークな本。神殿で「イエスちゃ~ん」と呼びまわる母マリアや、聖霊降臨の場面で「舌のような」ローリングストーンズのアレが出てくるなど、聖書の出来事を身の周りの出来事で再構成して、ともかく笑って読みながらも絵に刻まれた教義を一通り理解できる奇書。絵に描かれたものなら教義の内容もかまわず、堂々と既成事実として説明してしまうところが変といへば変。
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