祭儀的生活 アジアの風習との関わり
【名付け親】

 イスラエルの名前の付け方を見ていると、結構成り行き任せな付け方が多い。ヤコブの子供など、レアが立て続けに子宝を授かってルベン(顧みる)シメオン(耳にする)レビ(結びつく)ユダ(ほめたたえる)と名付けると、ラケルは負けじとダン(裁く)ナフタリ(死に物狂いで争う)と名付けるといった具合。その子に一生着いて回る名前なのだからもっと丁寧に…とも思うのだが、当の本人たちはそれどころではない。子宝のあり方に自分たちの生活が掛かっているのだ。ヨセフ誘拐の一件もヨセフが生意気だからというだけでなく、親の偏見がそのまま子供の嫉妬に結びついたのではないか、とついつい疑り深くもなってしまう。
 モンゴルには悪名の風習があって、生まれたての赤子に「悪い犬」とか、「名前がない」「人じゃない」とか付けることもある。とても人間とは思えない名前を付けると、赤子を狙ってくる悪霊をだますおまじないになるのだそうだ。
 それにしても洗礼者ヨハネが生まれたいきさつは面白い。天使が祭室に紛れ込んで父ザカリアのもとに子宝を授かる旨を告げる。ザカリアは今更なにを…てな具合で鼻っから相手にしない。天使は怒ってザカリアの舌を混がらめて話しのできないようにしてしまった。
 さて年寄りになっても幸いに、子宝に恵まれたザカリアと妻エリサベツ。いざ生まれるとなってもザカリアはまだ口が利けない。とっさに板に書いた名は「ヨハネ」。この名こそ先の腹立ち紛れにザカリアの舌を奪った天使が命名しなさいと言い残した因縁の名。親戚中が「そんな名前はあなたの家系にはいませんよ」と忠告をしたところで、舌のこともあるしどうにも後に引けない。結局ザカリアの執念に負けて付けられた子の名前はヨハネ。ザカリアもようやく舌がほぐれて神に感謝の歌を歌った。立派な預言者として運命が定められたとて、なんとも可愛い我が子の誕生と相成りましてぞ。

 そこで漢字、当て字のユダヤ名を御披露いたします。お気に入りが御座いますれば使ってやってくださいまし。(と言いつつも、ほとんどは男の子です。下のよくある日本名も参照してください。)

野安(ノア)
 箱船でアララト山に漂着したノア。やっと野に安らぎを得た次第。
耶古武(ヤコブ)
 イスラエル(神と闘う者)というあだ名を付されたヤコブ。
麗安(レア)羅花瑠(ラケル)
 ヤコブの妻たち。中華風の豪勢な名前に。
隷美(レビ)
 主の僕として従うは祭司の建徳。
予是府(ヨセフ)
 夢を正しく解してエジプトの宰相にまでなったヨセフ。
蒙世(モーセ)
 世に十戒を携え啓蒙するイスラエルの指導者。
世主有(ヨシュア)
 主の名を掲げてカナンの地に進入するイスラエルの指導者。
栄吏也(エリヤ)
 主の栄えに遣えるは預言者の誉れなり。
留津(ルツ)
 波乱万丈の人生にあって姑と苦楽を共にと決意する。
誉侮(ヨブ)
 悪魔により試練を受けるヨブ。苦しみの中で正しさを証した。
偉斉也(イザヤ)
 あまねく世を救う偉大な業を成し遂げる方、生きた歴史の主を
 指し示す預言者。
真理庵(マリア)
 神の子を宿す幸いを天使に祝福されたマリア。
 常に御言葉を心に秘め忍ぶ心に幸いの秘訣あり。

よくある日本名
沙羅(サラ)尚美(ナオミ)真理亜(マリア)絵里(エリ)
伊作(イサク)良也(ヨシヤ)







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